無焼成レンガ

アジア諸国のレンガ事情
中国・インドなどのアジア諸国では、レンガの製造で大量の煤煙とCO2が排出され続けています。深刻な健康被害と地球環境への絶望的な悪影響。しかしレンガは、建築・舗装材として無くてはならない存在です。現地の土を使用して生産するレンガは”地産地消”の建材としてアジア諸国ではインフラ整備の”要”です。しかし、レンガ製造は致命的な問題を抱えています。
エイケンの取り組み
現地の土と砂を混合攪拌し、FPR/ECO5000のセメントペーストと混練りすることで、極めて優れた物性を発揮します。この技術を利用して製造された無焼成レンガは、焼成する必要もなく、エコロジーとエコノミーを両立する先端技術として注目を集めています。
圧縮強度試験結果
標準配合で無焼成レンガを作成し、圧縮強度試験を行いました。材齢は一週間(一週強度)。使用した土は石川県産。圧縮強度の試験結果は144kNを記録しました。

50倍液で作成した試験体

一週間で圧縮強度試験

144kNの強度
開発者の想い
きっかけは2014年・・・
「レンガ工場で働く人たちの健康被害が深刻なので、
環境にやさしい・焼かないレンガが作れないか」
南アジア諸国に国籍を持つ知り合いから、弊社代表取締役の蜂谷英明に相談がありました。「母国では、大気汚染が原因で人びとの健康被害や労働環境の悪化を引き起こしている。特にレンガ産業がこの課題に悩んでいる。」知り合いからの悩みを聞き、この課題解決に携わりたいと強く感じました。
レンガ工場で働く人びとの健康被害を改善することで、彼らの収入が安定する。収入が安定すれば、未来ある子どもたちが教育を受け続けることができる。「全ての人びとが格差なく生活できるような好循環を作っていきたい」という想いからこの事業がスタートしました。
知り合いの母国が抱える課題解決に向け、エイケンとして動き始めました。
ものづくり補助金で土固化の調査をしていたことからヒントを得て、蜂谷が2000年に開発したフラットプラグレジンを応用することで、環境にやさしい焼かないレンガが作れるのではないかと思い、フラットプラグレジンを応用し、ECO5000®を開発しました。
このECO5000®の開発によって、焼かないレンガ「BRENGA」が生まれました。
ありがたいことに、様々な国、企業からも引き合いをいただき、現在は南アジアを中心にBRENGAの製造、普及促進に向けて、様々な事業の協力を得ながら、少しずつ形にしています。現在でも焼成レンガを建築資材として使用する国々は世界中にたくさんあり、それらの国のレンガ産業は大気汚染をもたらす産業の1つとも言われています。
健康被害、労働環境の悪化に悩んでいる人びとの生活を改善し、未来ある子どもたちに夢のある世界を残すため、エイケンはこれからも社会課題の解決に努めていきます。



焼かないレンガビジネスのきっかけ
大気汚染問題とそれに付随する健康被害
- 大気汚染全体の約72%は焼成レンガ窯より発生(石炭由来)
- 排出されるPMの58%は焼成レンガ産業から排出
- 年間約1,800万トンCO2の排出
レンガ産業におけるPM2.5由来の死亡率
約1,200人〜2,800人
農地の非耕作地化
- 毎年約690エーカーの農地がレンガ製造のために採取
土壌採取前後の農作物収穫量
36%〜77%減少※
※地域別で差異は見られる
未許可のレンガ工場の稼働
- バングラデシュにある約8,000の焼成レンガ工場のうち、約45%の3,500工場がレンガ製造工場として許認可を受けていない状態で稼働
規制は遵守していない状態での稼働により
環境問題の悪化を助長
焼成レンガに替わる代替建築資材の発掘
- 焼成レンガに替わる代替建材として、コンクリート・ブロックが市場に出回り始めている(製造工場:約200社)
- 3,500工場が閉鎖することにより約45万人が雇用喪失
焼成レンガより品質が劣る(建材強度が満たせない)ほか、販売単価が高くなるため普及しづらい
経済成長の鈍化や貧困悪化の要因となる可能性大
取り組み概要
焼成レンガを建築資材として使用している南アジア地域が抱えている大気汚染物質の主要因の1つである焼成レンガ窯から排出される黒煙を抑制するため、エイケン社が開発した無機質混和材※1(日本製)を用いて無焼成レンガを現地製造し、南アジア地域での新規建築資材としての認知度・実用を高めていきます。

※1 商標取得済

事業を通じたソーシャルインパクト※※バングラデシュ国内の約35%がBRENGAに切り替わった場合

環境的効果
大量の大気汚染物質排出による気候変動、大気汚染問題の緩和
- CO2は630万トンの抑制
- 石炭由来の焼成レンガ窯から発生する大気汚染は25%抑制

社会的効果
農作物廃棄の抑制
- 肥沃な農地土壌が原材料として使用されなくなることにより、年間約35トン分の米生産が可能(約260人の年間米消費量に相当)

健康被害の改善
劣悪だった現地レンガ工場での労働環境の改善ならびにレンガ製造労働者と周辺住⺠の健康被害の抑制
- 大気汚染由来の死亡者数が、ダッカ市内で5,250人の低減に資する
- レンガ産業におけるPM2.5由来の死亡率は420人〜980人の低減に資する

経済的効果
無焼成レンガ製造が促進されることによる現地雇用の安定化と日本国内産業のさらなる活性化
- 無焼成レンガ製造の促進により、レンガ産業に従事する約45万人の雇用維持につながる
- 無焼成レンガ製造にかかる備品の輸出拡大に伴い、日本国内の輸出額増に貢献

イノベーション(技術革新)的効果
新たな建築資材を製造する産業が誕生する
- バングラデシュのレンガ産業の約35%が焼かないレンガの技術に切り替わり、新たな技術革新につながる
- ECO5000を利用することで、海水・海砂を利用してもBRENGA原料が固まるため、焼成レンガと比較すると緻密で水を通しづらい「バングラデシュにとって新しい資材」が誕生する
これまでの実績
講演・取材
講演先 | ベストフロアー工業会 |
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実施年度 | 2021年4月11日 |
講演・登壇者 | 蜂谷英明 |
講演内容 | 床に打設されたコンクリートのブリーディング水を、大気圧の力(真空との圧力差)で脱水と同時にコンクリート表層を圧密し短時間で処理することができ、コンクリート表層を強化させる、コンクリートの余剰水を強制的に吸う技術について、ベストフロアー工業会の発起人の一人として登壇(NETIS登録番号CB-210013-A) |
講演先 | ネパール投資セミナー「〜ビジネスポテンシャルはエベレストを越えて〜」(JETRO・UNIDO東京事務所共催) |
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実施年度 | 2019年11月20日 |
講演・登壇者 | 蜂谷英明 |
講演内容 | 「地球にやさしい無焼成レンガビジネス」と題して、ネパールでの事業展開の背景、当時の事業概要など、ネパールでの日本企業の事例の1つとして登壇 |
事業採択(JICA)
事業名称 | 中小企業海外展開支援事業〜基礎調査〜(2016年度第2回) |
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調査名 | バングラデシュ国/無焼成レンガの生産を可能とする無機質強化材導入の基礎調査 |
実施年度 | 2017年7月〜2018年10月 |
概要 | 土壌を固化する特徴を有する無機質強化材を用いたレンガ製造・製品の現地適合性を検討するため、現地レンガ産業界からの情報 収集や現地の土を用いたレンガ形成の簡易実験を行ったもの。 |
資料 |
事業名称 | 中小企業・SDGsビジネス支援事業〜案件化調査(中小企業支援型)〜(2019年度第1回) |
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調査名 | バングラデシュ国/無焼成レンガ製造可能な無機質強化材及び手動式レンガ製造機普及に係る案件化調査 |
実施年度 | 2022年2月〜2024年2月 |
概要 | バングラデシュ国の焼成レンガ産業に係る ODA 案件化とビジネス実現に関する案件化調査。気候変動や焼成レンガ産業従事者の 健康被害等という課題に対し、無焼成レンガを製造する手動式製造機と無機質強化材(ECO5000)を普及させるため、同国に 適した製造技術を確立・マニュアル化し、焼成レンガ産業へ認知を目指す。 |
資料 |
事業採択(経済産業省)
事業名称 | 第5回飛びだせJapan!世界の成⻑マーケットへの展開支援補助金(平成31年度「技術協力活用型・新興国市場開拓事業費 補助金(社会課題解決型国際共同開発事業)」) |
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調査名 | ネパールにおける無機質強化材と無焼成技術の普及による復興支援に資するレンガソリューションビジネス |
実施年度 | 2019年8月〜2020年3月(令和元年度) |
概要 | ネパールのレンガ製造事業者と連携し、レンガ製造機一式と土壌固化材を導入し、同国での無焼成レンガの製造・販売ビジネスの実 現可能性調査を実施した。 |
事業名称 | 令和3年度産業標準化推進事業委託費(戦略的国際標準化加速事業:産業基盤分野に係る国際標準開発活動) |
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調査名 | 無焼成レンガが市場に受け入れられるための仕様および評価手法に関する標準化調査 |
実施年度 | 2021年5月〜2022年2月(令和3年度) |
概要 | ネパールを調査対象地域としながらも、将来的には多くの国で無焼成レンガが普及することを見据え、無焼成レンガ市場に受け入れられるための仕様及び評価手法に関する標準化調査を行い、標準化戦略を立案することを目指し、1無焼成レンガの仕様基準、2無焼成レンガの品質確認のための評価手法、に関する調査研究を行った。 |
事業名称 | 令和5年度補正グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金(我が国企業によるインフラ海外展開促進調査 三次公募) |
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調査名 | バングラデシュ人⺠共和国/大気汚染問題の抑制に資する無焼成レンガ製造を通じた認知度向上並びに利用促進実証事業 |
実施年度 | 2025年(令和7年)5月〜2026年(令和8年)2月 |
概要 | バングラデシュが抱える大気汚染物質の主要因の1つである焼成レンガ窯から排出される黑煙を抑制するため、同国の大手焼成レンガ工場と連携し、エイケン社が設計支援した無焼成レンガ製造機と同社開発の無機質混和材※1(ともに日本製)を用いて無焼成レンガを製造し、同国への市場投入を図るほか、公共施設建設資材としての活用による現地適合性の実証を通じて、新規建築資材としての同国内の認知度・実用を高める。 |
事業名称 | ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(グローバル展開型)(令和元年度補正・令和3年度補正 第11次) |
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調査名 | アジア地域の環境保全に寄与する無焼成レンガ製造システムの販売 |
実施年度 | 2023年(令和5年)7月〜12月 |
概要 | アジア諸国に向けた無焼成レンガ製造システムの販売事業(ネパールおよびバングラデシュのレンガ製造業者の無焼成レンガの製造にあたり、調合・混錬、成形、乾燥に至るプロセス提供と機械や原料の販売、製造技術者の養成)を新規事業として立ち上げることを目指し、試作機・販売用機械の開発やECO5000の開発、製造マニュアルの作成、技術者研修などを行なった。 |
事業名称 | 平成26年度補正ものづくり・商業・サービス革新補助金 1次公募 |
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調査名 | 寒冷地公共工事の問題点を解決する凍結融解防止強化剤開発に向けた設備投資 |
実施年度 | 2015年(平成27年)11月〜2016年(平成28年)6月 |
概要 | 寒冷地の土木建築工事分野で⻑年解決課題となっている凍結融解問題解決のため、土泥を舗装剤へ変化させるエイケン社開発商品(シリカ系混和剤)の配合等を調整し応用することで凍結融解防止強化剤を開発する。 |
取材・掲載
- 朝日新聞デジタル「with Planet」(2024年6月14日掲載)
「黑い煙がモクモク……大気汚染源のれんが産業、日本企業も対策に協力」(取材者:荒ちひろ氏) - 朝日新聞グローブ第305号(2024年7月2日掲載)
「バングラデシュ「世界最悪」の大気汚染子どもをむしばむ」(取材者:荒ちひろ氏)
受賞・認定
【受賞】
- 株式会社エイケン「審査員特別賞」受賞(東京都信用金庫協会より「地域経済の発展に貢献したとして優良企業表彰制度にて表彰(2010年(平成22年)3月))
【認定】
- ベストフロアー工業会・会員(1998年〜)
- 日本床施工技術研究協議会・会員(1998年〜)
- AGCポリマー建材(株)ミルクリート正規認定工事店(2012年〜)
- アイカ工業(株)ジョリエース工業会・会員(2019年〜)
- 中堅・中小建設企業海外展開促進協議会(JASMOC)・会員(2024年〜)
- 一般社団法人 海外建設協会(OCAJI)・賛助会員(2024年〜)
特許・商標登録
【特許】
- モルタル混和材及びこれを用いたモルタル(第5004516号)
- コンクリート硬化方法(第5132903号)
- 海水配合モルタル(第5530836号)
- 土固化モルタル施工方法(第6760642号)
- 樹脂モルタル硬化体及びその施工方法(第5318552号)
【商標登録】
- 「フラットプラグレジン」(登録第6055115号)
- 「ECO5000」(登録第6817524号)